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労働者一人一人の権利、労働組合と組合員の権利



目   次

労働者一人一人が持つ権利(労働契約)
1、労働契約とは
2、労働契約の内容
3、労働契約の効力
4、労働契約の期間と解除
就業規則
1、就業規則とは
2、労働基準法での規定
3、就業規則の内容
4、就業規則の効力
5、労働者・労働組合が注意すべき点
6、一方的改悪・・・不利益変更について
労働組合と組合員の権利(労働組合法)
1、労働組合、及びその役割と目的
2、使用者がやってはいけない行為(不当労働行為)
3、労働協約
@労働協約とは
A労使間の確認文書はすべて労働協約
B労働協約の分類
C労働協約と[労基法上の協定]との違い
D労働協約の効力
E労働協約の有効期間と失効(労組法15条)



憲法に規定された労働者の権利

生存権(憲法25条)
「健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する」

生存権の保障を実現する二つの手段


労働の権利の保障と労働条件の最低基準 労使対等の保障
労 働 権(憲法27条)
1項・・・「すべての国民は勤労の権利と義務を有する」
2項・・・「賃金、就業規則、休息その他の勤労条件は、法律でこれを定める」
労働基本権(憲法28条)
団結権、団体交渉権、団体行動権(ストライキ権)の保障
1項より→職安法、労働者派遣法など
2項より→労働基準法、最賃法など
→労働組合法、労働関係調整法など
労働協約の締結(労働協約の就業規則より上位の効力を持つ根拠)


労働諸条件の規定の優先順位





注)法令は最低基準を示したもの(及び労使協定を結ぶ事項)



労働基準法(労基法)に示された大原則
1、労働条件は、人たるに値する生活のためのもの。
2、労基法の定める基準は最低のもの。「労基法の基準を理由として労働条件を低下させてはならない」
3、労働条件の対等決定の原則。会社と個人と結ばれる労働契約は対等とはいえない→労働協約の必要。
4、労基法の基準以下の労働契約・就業規則は許されない。
5、均等待遇、男女同一賃金。


労働契約・就業規則・労働協約の関係





労働者一人一人が持つ権利(労働契約)
労働基準法第2章(第13条〜第23条)

1、労働契約とは
@、労働者個々人が労務を提供するにあたり使用者(資本家)と結ぶ契約のことです。
★ 近代社会は、封建社会と違って、自由と平等を前提とした市民間の契約で成り立っている。→契約社会
★ 労働者が労働力という商品を売り、使用者がその対価(賃金)を払う労働契約は商品売買の契約と同じ契約です。
★ 労働者も使用者も契約を結んで働いているという意識が弱い。
A、労働者が提供する仕事の内容、密度、労働時間、その他労働条件は、本来労働契約で決まっています。
★ 商品の売買契約の三要素・・・商品の質、量、値段
★ 労働契約で決められていることも同じ。質=仕事の内容、量=労働時間、値段=賃金
★ 日本の場合は、(労働力)商品の値段だけが決められ、質も量も買主(使用者)が決める契約が多い。←欧米では考えられない契約
2、労働契約の内容
@、労働基準法による内容の規制
★ 労働契約の中で、労基法以下の項目は無効(労基法の規定が適用)。←これにより、労基法が定めた基準が労働条件の最低基準となります。
★ 労働契約を結ぶときの条件明示の規定(労基法15条1項) 「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない」
A、示すべき労働条件の内容
★ 明示すべき労働条件の範囲(労基法施行規則第5条)
イ、就業場所及び従事すべき業務に関する事項。
ロ、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項。
ハ、賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締め切りおよび支払いの時期並びに昇給に関する事項。
ニ、退職に関する事項。
ホ、退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いに関する事項。
ヘ、退職手当その他手当て、賞与および最低賃金額に関する事項。
ト、労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項。
チ、安全及び衛生に関する事項。
リ、職業訓練に関する事項。
ヌ、災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項。
ル、表彰及び制裁に関する事項。 ヲ、休職に関する事項。
★ イからニについては、就業規則のいかなる場合でも記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)に対応。ホからヲまでは、就業規則の定めのある場合には必ず記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)に対応しています。
★ 就業場所及び従業すべき業務に関する事項については、雇い入れ直後の場所及び業務のみならず、将来転勤又は配置転換が予想される場合は、その範囲を明示する必要があります。
B、明示の方法
★ 労働契約の締結のときに、賃金の決定、計算および支払いの方法並びに賃金の締め切りおよび支払いの時期に関する事項について明らかとなる書面を労働者に交付すること。(施行規則第5条2項)就業規則と事例でも可。
★ その他は、書面でも口頭でも良い、また就業規則を提示して内容を分かるように説明しても良いとされています。
C、禁止されている契約
★ 賠償予定(労基法16条)、前借金の相殺(同17条)、強制貯金(第18条1項)
3、労働契約の効力
@、労使で締結した労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する規準に違反する労働契約の部分は無効。無効になった部分は、労働協約の定めたところとなる。なお、労働契約に定めがない部分についても同様です。(労組法16条、労働契約に規範的効力といわれる。)
★ ただし、従業員が組合員とならなければ、原則として労働協約の適用を受けられません。
★ 就業規則を下回る場合も、その部分は無効です。(労基法93条)
4、労働契約の期間と解除
@、有期契約は1年を越えてはならない、ただし、専門職など限られた職種で3年が認められている。その他は、「期間の定めがない」契約となります。
A、契約解除(解雇、雇い止め)には、正当で合理的な理由が必要です。 ≪「定年まで」という契約も存在しないが、労働者が合理的な解雇理由として、定年に際して、その解雇の効力を争うことをあらかじめ放棄した制度と理解できる。正当、合理的理由=整理解雇4条件。つまり、労働契約において「正当な理由なくして定年まで解雇しない」との合意があったということ。≫


就業規則  労働基準法第9章
(第89条〜第93条)

1、就業規則とは
就業規則は「労働者の労働条件のすべてに関しての定め」です。
★ 本来、労使対等の原則にたって締結した労働協約こそ職場の憲法。しかし、現実には就業規則が憲法のように君臨しているのが現状。
★ 労働組合が無い、仮にあっても労働協約を成立させる力を持っている職場が少ない。
2、労働基準法での規定
@、常時10名以上の労働者がいる事業所の場合は就業規則を作成することになっています。(労基法89条)
A、作成、変更にあたっては労働者の過半数を代表する労働組合、そのような組合が無いときは全従業員の過半数の支持を得た代表(選出方法は後述)の意見を聞く必要があります。(労基法90条1項)・・・詳しくは後述
★ 過半数の組合の意見を聞けば、少数組合が存在してもその意見を聞く必要は無い。
★ 意見を聞いても、同意は必要なく、拘束もされない。
B、労働基準監督署(労基署)への届出の方法
★ 就業規則を作成・変更したときは、労働組合又は労働者を代表する者の意見を掲載した書面を就業規則に添付して労基署に届け出る。(労基法89条、90条2項)
★ 意見書には労働者代表の署名又は記名捺印が必要。(労基則49条2項)意見を聞かなかったときには30万円以下の罰金。(労基法120条1号)
★ 使用者が労働代表に十分に時間的余裕を持って意見を求めているにもかかわらず労 働者代表が意見の陳述、意見書の提出を拒んだ場合、意見を聞いたことが客観的に説明できる限り受理される。(基発735号)
C、周知義務
★ 就業規則は、常時見やすい場所に提示し、または備えつけるなどの方法で周知させなければならない。(労基法106条1項)
イ、周知させない場合は、使用者は30万円以下の罰金。(労基法120条1号)
ロ 周知させていない就業規則には、効力はない。(厚労省見解)
3、就業規則の内容(労基法89条1号から10号まで)
@、いかなる場合でも必ず記載しなければならない事項。(絶対的必要記載事項)
イ、始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項。(第1号)
ロ、賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締め切りおよび支払いの時期並びに昇給に関する事項。(第2号)
ハ、退職に関する事項。(第3号)
A、その事項について、定めのある場合必ず記載しなければならない事項。(相対的必要記載事項)
イ、退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いに関する事項。(第3号2)
ロ、臨時の賃金および最低賃金額に関する事項。(第4号)
ハ、労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項。(第5号)
ニ、安全及び衛生に関する事項。(第6号)
ホ、職業訓練に関する事項。(第7号)
へ、災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項。(第8号)
ト、表彰及び制裁に関する事項。(第9号)
チ、前各号に掲げるもののほか、当該事業場のすべてがその適用を受ける可能性があるもの。(第10号)
B 使用者が自由に記載するもの。(任意記載事項)
4、就業規則の効力
@、就業規則は使用者も拘束する。
A、労基法との関係 ★ 労基法以下の就業規則は無効、その場合労基法の定めによります。
★ 労基法の改正によって、基準を下回る場合が多いので注意すること。 例えば、年次有給休暇の付与日数や法定休日の割増率。
★ 労基法の保障する権利について、就業規則の定め方が法律の精神に反する場合 があるので注意すること。 (変形労働時間制の場合)日々の労働時間に長短があるというだけで、あらかじめ毎日の始業、終業時間は定めなければならない。変形だからといって使用者が勝手に毎日の労働時間を変更できるように定めている場合は無効。 (年休取得について)労基法では、労働者の請求があれば使用者の承認は必要なく、使用者の承認を条件とする規定は無効。使用者が時季変更権を行使できるのは、「事業」全体の正常な運営を阻害する場合で、ただ単に忙しいという「業務」の正常な運営を阻害するというだけでは要件に合致しない。就業規則に時季変更権行使を「業務の・・・」としている場合は労基法に違反、無効。
B、労働協約は就業規則に優先します。(詳しくは労働協約の項)
C、就業規則は、労働契約に優先します。
5、労働者・労働組合が注意すべき点
@、就業規則の制定・改廃には「過半数」労働者の代表の意見聴取が必要です。
★ 就業規則は、事業所単位に制定、届けられるものだから、その事業所(複数の場合は夫々)の全労働者(パートなども含まれる)の過半数の代表となります。
★ 労働者の規定とは「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用されるもので、賃金を支払われる者」(労基法9条)、使用者とは「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」(労基法10条)
★ 過半数の代表者規定は、三六協定、フレックス・タイム、1年の変形労働時間制、その他「賃金からの差し引き協定」、みなし労働時間制、裁量労働時間制の書面協定でも要件となっています。
★ 過半数以上を組織した労働組合がない場合の代表者を選ぶ方法について。(基発第1号) 適格性・・事業場全体の労働時間等の労働条件の計画・管理に関する権限を有するなど管理監督者でないこと。 選出方法・・・(A)当該事業所の労働者に判断する機会が与えられていること、(B)労働者の投票、挙手などの民主的な手続きがとられていること。←組合としては、原則として無記名投票を要求すべきです。
A、労働組合の就業規則に対する意見について
★ 意見を求められながら出さないと、就業規則は受理される。さらに黙示の同意と見られかねません。
★ 一方的改悪の場合、そのことを明確にしておけば、改悪条項を労働組合の組合員に適用させることはできません。
6、一方的改悪…不利益変更について
就業規則の一方的改悪(不利益変更)は認められません。
★ 高度の必要性、合理性があり、代償があれば認められる可能性があります。最近 その傾向が強くなっているので注意を要します。


労働組合と組合員の権利(労働組合法)
労働組合は労働者の働く権利や環境を守るために作られ、憲法で擁護された団体です。産業革命後のドイツやイギリスで労働基準法や労働組合法が形成されていったのに対し、日本の労働法はずっと長い間にわたり貧弱でした。
T、労働組合、及びその役割と目的
労働者が労働者の地位を向上させるために労働組合を組織することを擁護し、使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するために、正当性のある要求に基づいて経営者と対等に労働組合が交渉できる権限を保障している。争議行為に対する刑事免責(刑法の適用を受けない)、民事免責を受けます。以下、労働組合法(労組法)の規定に基づいてポイントを説明します。(なお、争議行為の法律上に規定は労働関係調整法第7条のとおりです。)
1、労働働組合は、規約に次の規定を含まなければなりません。(労組法5条)
イ、名称
ロ、所在地
ハ、組合員が労働組合のすべての問題に参与する権利、平等に扱われること。
ニ、人種、宗教、性別、門地、身分によって組合員たる資格を奪われないこと。
ホ、役員の選出は、直接無記名投票による。
ヘ、総会は、少なくとも毎年1回開催すること。
ト、会計報告の職業的に資格のある会計監査人(公認会計士、監査法人)による証明と組合員への年1回の公表。 注)職業的資格のある会計監査人の証明は、法人登記をする場合など以外、不当労働行為のための資格審査の要件とはなりません。
チ、ストライキ権の確立のための投票は、直接無記名による。
リ、規約改正は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持が必要
★下記の団体は労働組合とは認められません。
イ、使用者の利益を代表する者の参加を許すもの。(具体的には次項)
ロ、使用者の経理上の援助(後に記述する便宜供与を除く)を受ける団体
ハ、共済や福利事業のみを目的とする団体
ニ、主として政治運動又は社会運動を目的とするもの
2、使用者の利益を代表する者(下記に示す)以外の
すべての従業員は、労働組合に加入できます。
★ 課長などの職制名などに関係なく、実質的に下記事項に触れるもの。なお法律上の労働者とは職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活するものをいいます。
@ すべての会社役員,工場支配人、人事並びに会計・人事・労働関係に関する秘密情報に接する者。
A 従業員の雇用、転職、解雇の権限をもつ者、会社の政策(生産、経理、労働関係など)決定について権限・或いは直接これに参画する者。
B 労務部の上級職員。
C 秘書および人事、労務関係の秘密の事務を取り扱う者。
D 会社警備の任にあたる守衛。(ただし、見張り、受付、巡視などのみの場合は除く)
★、労働組合員の範囲は、上記の使用者の利益を代表するもの以外で、労働組合が決めればよいことになります。(使用者は組合員の範囲を狭くしようとするので注意すること)
注) ユニオンショップで組合員の範囲が決められている場合でも、範囲以外の従業員も組合員になれる。(ユニオンショップ協定適用外の組合員)
U、使用者がやってはいけない行為
(不当労働行為)労働組合法第7条
1、
@、労働者が労働組合員であること、又は労働組合を結成したことを理由に解雇や不利益扱いをすること。
A、労働組合に加入しないこと、脱退することを条件(雇用条件)に採用すること。(黄犬契約という) ★、組合員であることを理由に、賃金や配置転換、昇給昇格などで差別することは許されません。さらに厚労省の見解では, 使用者側の言動が、その意図の如何に関わらず、団結権侵害に向けられたときや、スト参加による不就業を無届欠勤扱いにし、懲戒もしくはそれに似た取り扱いをすることなども不当労働行為となります。
★、組合員に対する「不利益取り扱い」、例えば、組合員のいない、又は極端に少ないなど組合組織の充実していない事業所に転勤させること、新会社をつくって組合員だけを再雇用しないこと、従来の職種と違う職場へ配転をすること、さらに、小会社への移籍を拒否したことを理由に解雇することなどが不当労働行為と認定されています
★、同様に、活発な組合員を経歴詐称を理由に解雇することや、新たに実施した定年制によって組合活動家を解雇すること、希望退職が目標に達したのに、組合員を解雇することなども不当労働行為となります。
★、組合対策として、成績不良を理由に解雇するのは不当労働行為になることがある。例えば、母看病のため病欠、通学のための早退などを理由にした解雇などや、組合活動家を遠方の事業所に転勤させることは認められません。
2、正当な理由なく団体交渉を拒むこと。(団体交渉の応諾義務違反)
★、≪交渉員の問題≫ 労働組合が従業員でないもの(上部や委任したもの)を労働者代表として申し込んだ団体交渉は、拒否できません。(ただし、労働協約で第三者委任禁止が定められていると拒否が認められてしまうので注意をすること。)また、被解雇者が交渉委員になっていることを理由に、団交は拒否出来ません。
★、≪合意事項の文章化について≫合意に達しているのに協定への調印、調印交渉を拒否すること、賃上げ要求に対しての文書回答化を拒否、団交を決裂させることは認められません。
★、≪唯一交渉協定がある場合≫多数組合が唯一交渉協定を結んでいる場合でも、少数組合との団交を拒否することは出来ません。
★、≪交渉方式について≫団交ルールが労使間で合意・設定されていないことを理由にして団交を拒否することは出来ません。
★、≪交渉手続き・対応について≫よくある次のようなことは認められていません。
1、ゼロ回答を続け、その理由を誠意を持って説明しないこと。
2、(会社が)団交に対案も用意せず、進んで討議に参加しないこと。
3、団交には社長が出席せず、出席者は全面的な決定権を持たず、理由を示さずゼロ回答を続けること。
4、組合規約、組合員名簿不提出を理由にして団交を拒否すること。
5、団交席上組合側から若干の感情的発言があったことを理由に団交を拒否すること。
6、書面回答は団交義務を果たしたとはいえません。
★、≪交渉事項について≫労働条件そのものについてだけでなく、労務内容の変化が生ずる(受注の決定、下請化、職場再編成、会社解散、解雇など)事項も含まれます。
3、労働組合の運営への介入、経費の援助をすること。(労働組合の運営への支配介入) ただし、時間内組合活動、福利厚生に対する寄付、組合事務所の供与は認められる。(便宜供与)
★、≪組合軽視・団交軽視と支配介入≫組合の要求に対する回答を組合にせず、直接組合員・従業員に示すこと(飛越し回答)や、組合の存在を無視して組合員と直接労働条件の交渉をすることは認められません、また、誠意ある団交を尽くさないまま、賃金・一時金の支給を一方的にすることも認められません。
★、≪組合組織に対する介入≫、組合役選への介入や、組合の争議に対抗するため、非組合員たる管理者を濫造することも認められていません。
4、便宜供与
使用者の組合に対する経理援助は認められていないが次の項目については認められている。
@、事務所の供与
★、利用者の範囲の制限、利用時間を制限することは出来ません
★、協定に基づき、貸与契約を結ぶようにすること。(たとえ無償貸与契約であっても使用貸借契約であって、労働法的使用関係ではないので、労働協約失効でも権利は消滅しません。)
A、組合掲示板、チェックオフ
★、掲示物に対する事前許可は認められません。(たとえ取り決めがあっても)
★、組合掲示板、チェックオフは、労働協約に基づくもので協約の失効によって権利も消滅します。
B、時間内の交渉についての賃金保障。
5、労働委員会への申し立て(再審申し立ても含む)、労働者の証拠提出、証言を理由として解雇、不利益扱いをすること。
V、労働協約労働組合法第3章(第14条〜第18条)
1、労働協約とは
労働協約とは「労働組合がたたかいのすえに勝ち取った成果を労使間で確認した文書」です。
★、労働協約によって、内容によっては労働者を締め付けるためのものになる場合があるので、労働者にとって有利なものだけを協定化すること。(労働条件等の切り下げに対する強力な武器になります)
2、労使間の確認文書はすべて労働協約
イ、「協定」「覚書」「確認書」など名称に関係ありません。必ず労使双方が署名・捺印すること。
ロ、包括的協約だけが協約ではなく、個別の賃金など労使間で確認した文書も協約です。
★ 個別の協約の積み重ねこそ重要です。協約がない部分は、法律通りです。
3、労働協約の分類
イ、債務的条項・・・労働組合がもつ権利(債権)を、使用者が守り、実行すべきこと。
1)組合活動に関する部分
★ 時間内の組合活動、施設利用(電話の取り次ぎ、組合事務所、掲示板など)、チェックオフ、専従など
2)労働基本権に関連する部分
@ ユニオンショップ、唯一交渉団体協約など
A 組合員の範囲、団交事項、団交手続、争議手続、争議不参加者など
B ユニオンショップについては、企業ごとに結ぶ場合については注意を要します。
★ 憲法や労組法で保障された労働組合・労働者の権利を制限する協約は必要ない。 前項@のロの協定の各項目。(権利を譲歩してまで取る価値が無い、協定がなくても当面は労組法で充分であるし、獲得するならば労組法の規定以上のものを) (注意すべき協定・・・唯一交渉団体約款、組合員の範囲、第三者委任禁止条項、平和条項、ユニオンショップなど)
ロ、規範的事項・・・労働条件に関する部分 労働時間、休日、休憩などの労働条件、退職金、人事条項など
★ 包括的労働協約を追及するのでなく、労働条件の協定(規範的事項)の積み重ねを重視すべきです。
★ 注意すべき協定の結び方・・・残業・休日出勤の活用、残業手当の計算方法、年休の取り方、休暇・特別休暇(慶弔など)の重なりなど。
4、労働協約と「労基法上の協定」との違い
賃金からの差し引き協定(労基法24条)、時間外・休日勤務に関する協定(労基法36条)、フレックスタイム制(労基法32条の2)、1年単位の変形労働時間制(32条の4)、みなし労働時間制(38条の2、3項)、裁量労働時間労働制(38条の2)
イ、 対象の違い(労働協約は労働者の要求にかかわるすべて、労基法上の協定は労基法の要求する項目のみ)
ロ、 主体の違い(締結の主体は、労働協約の場合は労働組合、労基法上の協定の場合は事業所の労働者の過半数の代表)
ハ、 効力の違い〔労働協約は原則として労働組合員のみ(次に説明する一般的拘束力を持つ場合を除いて)、労基法上の協定は全従業員に適用〕
5、労働協約の効力
イ、労働協約は、就業規則に優先する。
★「労働条件は労使対等で決定」(労基法2条)であり、「就業規則は労働協約や法令に反してはならない」(労基法92条)となっている。「労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効とする」(労基法16条)
★ したがって、就業規則は、労働契約には優先するが、労働協約には勝てません。
ロ、労働協約の適用範囲 労働協約の効力が及ぶのは、労働組合員に限られるのが原則です。
★ ただし、事業場内同一地域で組合員より低い労働条件で働く非組合員がいると、労働組合の組合員の労働条件も足を引っ張られ、低くされる恐れがあるので効力が事業所全体(労組法17条)、地域(労組法18条)に及ぶ規定があります。(一般的拘束力という)
★ 「ひとつの工場事業所に常時使用される同種の労働者の4分3以上の労働者が一の労働協約の適用を受けるにいたったときは、当該工場事業場に使用される他の同種労働者に関しても、当該労働協約が適用される」(労組法17条) ≪パート、臨時の労働者も「同種」と扱うべきですが、採用条件、賃金、試用期間が常用工と違った扱いがなされており、拡張適用すべきでないという考えが強い。ただし、「女性の臨時社員の賃金が女性正社員の8割以下は違法」(丸子警報機事件判例)≫
★ 少数組合の協定内容が有利な場合は、多数組合の協定の拡張適用されない。その他の場合は、少数組合にも適用されるという説が有力です。
★ 署名又は記名捺印のない協約の効力は、合意があることに争いがない以上は労使を拘束する。ただし、前述の一般的拘束力は持てません。規範的効力は効力を有すると解すべきですが、反対見解の判例もあります。
6、労働協約の有効期間と失効(労組法15条)
イ、協約の有効期間は3年
★ 期間を定める場合は、3年が限度。(労組法15条1項)たとえ5年と決めても3年の有効期間を定めたものとみなされます。
ロ、期間の定めのない協約の場合
★ 3年で失効することはありませんが、90日前に予告さえすれば、90日の経 過後には失効します。(労組法15条3項、4項)また、「有効期間1年と労使いずれかの改廃の申し入れがないときは、更に1年に限り有効(自動更新条項)」という協定の場合は、双方の異議がなければ、何年でも存続しますが90日間の予告で失効させられます。(労組法15条3項) 2