展覧会の副題は、「光の天才画家とデルフトの巨匠たち」。 まずは「デルフトの建築画」の章である。ヘラルト・ハウクヘーストの《ウィレム沈黙公の廟墓のあるデルフト新教会》など教会内部を細部まで正確に描写した作品は素晴らしい。写真以上の写実性である。
続いて、「カレル・ファブリティウス」の章。レンブラントの弟子で、フェルメールの師の可能性も考えられたことのあるファブリティウスの作品が、この展覧会に4〜5点まとまって出ている。《歩哨》は、美術の専門家にとって不可解な作品として有名。したがって、この画の前に立って推理をしてみるのも面白い。錯覚を呼び起こすような透視図法の名手であったファブリティウスの実験的精神を示す小品《楽器商のいるデルフトの眺望》は、そのまま見るのではなく、彎曲した面を有する透視箱に入れて見るようになっているようである。
次は「デ・ホーホ」の章。光と影の技法に加えて、複数の部屋を取り扱うデ・ホーホの手法はフェルメールに勝るものがある。フェルメールは透徹であるが、デ・ホーホは温かい。フェルメールと異なり、デ・ホーホには母親を中心とした家庭を題材とした作品が多い。ここでも《乳児に授乳する女性と子供と犬》、《食料貯蔵庫の女と子供》、《女と子供と召使》などの傑作が並ぶ。
2階には、世界的に人気の高いフェルメールが7点も集まっている。世界で30数点しか存在していないのだから、奇跡としかいえない。
1.マルタとマリアの家のキリスト(スコットランド・ナショナルギャラリー): 唯一の宗教画。結構に大きな作品で、構成は緊密で、タッチは力強く、色彩も美しい。訪れたイエスをもてなすマルタとイエスの話に聞き入るマリア。椅子に書かれているIVMeerという署名はしっかりと確認できた。
2.ディアナとニンフたち(マウリッツハイス王立美術館): 神話画。結構に大きい作品である。小さな三日月をつけたディアナの足の手入れをするニンフのほかに3人のニンフと1匹の犬が描き込まれている。色彩はヴェネツィア派のように黄色や赤の暖色が目立つ。
3.小路(アムステルダム国立美術館): 4人の人物、白い壁、開いた赤いよろい戸、閉まった薄緑のよろい戸、通路、窓などすべてのコンポーネントが安定している。空の雲も良い。
4.ワインングラスを持つ娘(アントン・ウルリッヒ美術館): 女にワインを勧める好色な紳士と目を大きく開けて困ったように笑っている娘、そして肘を着いて横を見ているているお呼びでない男。ステンドグラスには馬の手綱を持った女性が描出されているが、これは「節制」もしくは「中庸」の擬人像とのこと。その下に描かれた円いものは紋章のようだ。
5.リュートを調弦する女(メトロポリタン美術館): 左手で糸巻きを調節しながら、音程を調整しているところ。窓から差し込む光の表現が絶妙である。机の上には楽譜集、床の上にも本が見える。この部分は傷んでいるように思える。女性の耳飾りとネックレスが目立ち、髪は乱れているように見える。壁に掛けられた地図には、船が沢山描き込まれている。
6.手紙を書く婦人と召使い(アイルランド・ナショナルギャラリー): この画の光と影は本当に美しい。色彩も素晴らしく、今回のベストであると思う。手紙を描く女性、立って待っている召使、そして床には赤い封印、棒状の封蝋、書きかけで捨てられた手紙が、壁の画中画には《モーゼの発見》が見られる。
7.ヴァージナルの前に坐る若い女(個人蔵): これは小品。ルーブルの《レースを編む女》とほぼ同じサイズである。とても美しい女性で、首飾り、髪飾り、そして黄色のショールはいずれも魅力的である。
3階には「後期デルフトスタイルの画家たち」の章。ここ注目したのは、教会画で有名なエマヌエル・デ・ウィッテの《ヴァージナルを弾く女》である。
(2008.8a)
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