カリフォルニア美術散歩  (日本美術は別ページ)


 5月のサンディエゴとサンフランシスコに1週間滞在した。なかなか良い美術散歩ができた。 (2008.5a)

サンディエゴ美術館
ティムケン美術館
レジョン・オブ・オナー美術館
グレース大聖堂
サンフランシスコ近代美術館
デ・ヤング美術館
アジア美術館

 


クリヴェッリ《聖母子》  この美術館は2003年にも行ったが、駆け足だったので、今回もう一度見ることにした。ショップに入ってみると、前回と違い図録はできていたが、アメリカ、アジア、ヨーロッパのアートが混じったもので、お目当てのヨーロッパオールドマスターの図像は限られていた。そこでオールドマスターの部屋では、フラッシュなしの写真を撮りまくった。お気に入りは、クリヴェッリ《聖母子》、ジョルジョーネ《男の肖像》、ジョット《父なる神と天使》、ムリーリョ《マグダラのマリア》、スルバラン《神の小ひつじ》、ウェイデン派《キリスト降架》、エルグレコ《聖ペテロの改悛》、ルーベンス《永遠の寓意》、ルーベンス派《聖母子と聖フランチェスコ》、プシュード・ピエールフランチェスコ・フィオレンティーノ《薔薇の聖母》。

  今回の企画展は2つ。一つは、インド近代美術の"Rhythms of India: The Art of Nandalal Bose (1882-1966)"。植民地美術からの独立を果たしたこの英雄的アーティストの作品に初めて接した。

 もう一つは、ご当地の現代美術"Inside the Wave: Six San Diego/Tijuana artists construct social art"。この中で面白かったのは、Particle Groupの作品。白いインスタレーションの間を通っていくと、センサーが働くらしく、大きな音や声がする。ナノテクノロジーに対する警鐘だというが、その意味はともかく驚かされた。

 アジア系の常設展では、"Designs on Each Other: Indian Paintings and European Prints (16th-19th Centuries)"と銘うった展示室のインド細密画や"Tastes in Asian Art"という仏像室の金色の男女合体神が目をひいた。

 詳細はブログに書いた。

(2008.5a)


 これもバルボアパークの中にあり、サンディエゴ美術館の隣りにある立派な建物である。

1.イタリア・スペイン絵画: グエルティーノ《放蕩息子の帰還》、ムリリョー《磔刑》、ベロネーゼ《聖母子・聖エリザベス・聖洗礼者ヨハネ・聖ユスティーナ》

ブリューゲル《種まく人の寓話》2.オランダ・フランドル絵画: ブリューゲル《種まく人の寓話》、レンブラント《聖バルトルマイ》、ハルス《男の肖像》、ルーベンス《甲冑をつけた若者》、ウィッテ《新教会内部》、メツー《手紙を受け取る女》

3.フランス絵画: シャンパーニュ《盲人を癒すキリスト》、クルーエ《Guy XVII, Comte de Lavel》、フラゴナール《目隠し遊び》、ブーシェ《公園の恋人》、ダヴィット《クーパー・ペンローズの肖像》、コロー《ヴォルテッラの風景》

4.アメリカ絵画: ビアシュタット《ヨセミテの滝》、コプリー《トマス・ゲージ夫人》、イネス《アリシア》、ウェスト《フィデリアとスプランザ》、モラン《ローマの夕日》、

6.ロシアイコン: 15世紀両面イコン《セバステの40人の殉教者と灼熱の炉の4人の男》

 詳細はブログに書いた。

(2008.5a)


  まずお目当てのヨーロッパ絵画常設展へ。時代順に見ていくが、エル・グレコ以降の主な作品は東京でしっかり予習して来ているので、ジョルジュ・ド・ラトゥールの《老人》と《老女》などには軽く再会の挨拶を交わすに止めることとした。

レジョン・オブ・オナー美術館  東京には来なかった絵画の他に、充実した彫刻や装飾品をしっかりと観た。例えば、ロッビア、クラーナハ、ティントレット、ポントルモ 、ルーベンス、ヴィジェ=ルブラン、ゴッホ3枚、スーラ、ロダン、ダリ。

 次は大好評の企画展「アニー・リーボビッツ。ある写真家の人生 1990ー2005」。彼女は、米国を代表する女性ポートレート写真家で、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの写真で売り出し、その後幾多の賞に輝いている。200点以上の作品が展示されており、観客はとても熱心に観ていた。作品の中には、ネルソン・マンデラ、ブッシュ大統領とその側近、ビル・クリントン、妊娠したデミー・ムーアなどの他に、アメリカやヨルダンの風景、彼女の3人の娘や家庭生活の写真まで展示されていた。あまり写真展は見るほうではないのだが、観客の熱気がうつったらしく、時間をかけてしっかり観てしまった。

 もう一つの企画展は、「イスラエル考古学研究所のハイライト:死海文書と5千年の宝物」。有名な死海文書をはじめて見た。光源が1分毎に切れるようになっており、この貴重な遺産の保護に留意されていた。いつか森美術館でレオナルドの手稿が展示されたときと同じ方式である。

 詳細はブログに書いた。

(2008.5a)


キース・へリング《キリストの生涯》 シグレース大聖堂はノブヒルの頂上にあるゴシック建築の荘厳な教会。 正面の扉はギベルティの《サン・ジョヴァンニ洗礼堂の門扉》の模造。祭壇の後にはキリスト磔刑と聖母子像が荘厳に飾られている。後陣に回り込むと、内陣のパイプオルガン奏者を後ろから見ることになる。正面の薔薇窓がよく見える。横堂の上のステンドグラスも美しいし、壁にはマグダラのマリアのイコンが掛けられていた。側廊の壁にはキリスト生誕の木彫があり、上には数式が描かれたアインシュタイン・ウインドウが見られた。

 入口の脇に自分自身がエイズで死亡したキース・へリングがエイズ撲滅を願い制作した《キリストの生涯》が特別な礼拝室の中に飾られていた。その部屋に入ったところには部屋の名前とロウソクが置かれており、左にはヘリングの画が祭壇画として祀られ、右には仲間が描いたと思われる旗が下げられていた。

 詳細はブログに書いた。

(2008.5a)


 ダウンタウンの3rd Streetに面したビルの美術館。まず5階へ上がる。ここはいずれ屋上庭園になるとのことで、そのジオラマが展示されていた。現在は、そこへ行くブリッジにOafur Eliassonの「一方通行トンネル One way tunnnel」ができていた。色ガラスの作品で、天窓から燦々と光が注いでくる。外から見ると赤と黄色のプリズムの集合体のようで、中を通っていくと、その赤と黄色の色合いが変わっていく。帰り道はなんと青色になってしまう。とても面白かった。

 4階に降りると、「フリードランダー展」という大規模な写真展である。風景・肖像・社会現象・裸体など幅広い題材をとらえた革新的な展覧会だった。ここでは「初期メディアアート・コレクションの合同展」も開かれていたが、時間がかかるし、あまり興味も持てなかった。もうひとつ「ポール・シーツェマ新作展」は、古代文明を現在の西欧文明から解釈しようとするものとのことだが、正直なところ良く分からなかった。

 3階は、「ガブリエレ・バジリコ写真展: サンフランシスコからシリコンヴァレーへ」で、現代のテクノロジーのブームに焦点を当てている。近年の変化を捉えただけの写真が並んでいる。退屈。ここには、近代写真コレクションも並んでいた。地球というものに焦点を当てているらしく、topographic photographyという新しい名称がつけられていた。

マティス:帽子の女 2階には、「マティス以降」という題の常設展で、デュシャン、オキーフ、リヒター、リベラ、ジャコメッティ、ウォーホルなどの作品が並んでいたが、展覧会の意図がいまいちつかめず、お気に入り探しに終わってしまった。まずいことに、同じ階に、「Elise S. Haas コレクション近代名画展」も行われており、これにはマティス、ムーアを中心に、ピカソ、ブランクーシ、ヘップワースなどがあったが、「マティス以降展」と完全に混線してしまった。このフロアには、「分割」と称する建築の展示もあったが、これも建築家以外には難しい。

 全体としてのお気に入り作品は、
○ウィリアム・アンダース《earthrise seen for the first time by Human Eyes》、○マティス《帽子の女》と《生の喜び》、 ○オキーフ《Lake gorge》、 ○リヒター《読書する女性》、 ○ピカソ《Tete de trois quarts》、 ○りベラ《花運び》○ピーター・ワグナー《Building made of Sky. Guillotine of Sunlight; guillotine of Shade》、 ○ウォーホル《National Velvet》、 ○ジム・ホッジス《No betweens》、 ○ジェームス・シエナ《Nestling connected》、 ○ジュニア・アントーニ《Lick & Lather》

 詳細はブログに書いた。

(2008.5a)


 バスでゴールデンゲート・パーク内のこのアメリカ絵画の殿堂へ。美術館は壁全体に銅板を施し、銅板が錆び緑青となっていく様を表現することで自然との調和をはかっている。これは日本建築の銅葺き屋根と同じ発想なのだろう。大きな逆三角形のタワーがユニークである。

 本日の企画展のひとつは「ギルバート&ジョージ」展。ごく最近、現美の「ターナー賞展」で見たばかりなのでパス。もう1つは、「天幕と商業:トルクメン織物の傑作」。こちらはこの美術館の有名なカーペットやテントなどの織物展。

オバタ《シエラ高地の湖》 1階は待望のアメリカ美術展。最初に入った部屋は「20世紀から現代美術」。お気に入りは、オキーフ《ペチュニア》、オバタ《シエラ高地の湖》、ダヴ《かもめのモチーフ》、松本ヒロシ《エリザベス2世》、サム・フランシス《ヘリオ》、グロッス《マンハッタン下町》、リベラ《2人の女と子供》、ホッパー《オルレアンの肖像》、原田タダユキ(ダン)《バラック》、ベンシャーン《オハイオ・マジック》、アボットとホイッスラー《Gold scab》、ホイッスラーの肖像や風景なども良かった。

 ここから出てくると、ちょうど11時の「アメリカ美術」のギャラリー・トークに遭遇した。これはNative American Artの部屋から始まっていた。最初はマヤ文明。それから時代順にもう一度20世紀ー現代アメリカ美術に回ってきたので、よく理解ができた。前述のオバタが第二次大戦中にキャンプに入れられていたことなどの話もあった。杉本ヒロシのエリザベス2世はタッソー館の蝋人形で、彼の母親に似せて描いたなどというジョークも面白かった。

 2階に上がると、広く光が入るようになっており、天井から吊るされた沢山の円錐形のオブジェの影が、まるでまるで涙のように見えた。また2階から彫刻のある素晴らしい庭が見え、カフェに繋がっているので、後でここでランチを食べた。この2階にもアメリカ美術が展示されていた。お気に入りは、チャーチの《熱帯の雨季》。19世紀の作品であるが、美しい虹と景色に圧倒される。先ほどのオバタの裸身像もあった。これには大正時代の関西美人画に通じるものを感じた。

 その他に、ニューギニア美術、アフリカ美術、トルクメン織物のように古いものから、リン・ハーシュマン・リーソンの《No Body Special》という赤いパンツスーツを街に持ち込んだ先鋭的なアートもあった。 最後に、タワーに登って写真を撮った。とても良い景色である。公園と美術館を一体のものとして設計したそのコンセプトの素晴らしさを実感した。

 詳細はブログに書いた。

(2008.5a)


 アメリカ西部においてアジアの美術がどのように扱われているのか、とくにその中で日本の美術がどのような位置を占めているのかを知りたくて、訪れてみた。無料のイヤフォーン・ガイドを貸してくれるが、説明はごく一部の作品に限られているし、作品数が多すぎるので、どの作品の説明かを探すだけで一苦労である。

Dish with Flowers and Leaf Design(イラン、1450−1500) 大まかにいうと3階では、南アジアー西アジアー東南アジアーチベットー中国(1)が16室に、2階では、中国(2)−韓国ー日本が14室にわたっていた。

 お気に入りは、1.Fragment of Budda Image(インド、100−200)、2.Birth of Budda(パキスタン、100−200)、3.Budda triumphing over Mara(インド、900-1000)、4.Dish with Flowers and Leaf Design(イラン、1450−1500)、5.Crowned Budda and Throne(ミャンマー、1850−1900)、6.Buddist Diety White Tara(ネパール、1400−1500)、7.貼花朶梅碗(宋朝、吉州窯)、8.玳瑁釉碗(宋朝、吉州窯)、9.松石緑釉祭器三足鼎・觚・觚(清朝、賢隆)、
10.両大師駕籠美人図(明治時代、三代広重) @サンフランシスコ

 詳細はブログに書いた。

(2008.5a)


田逸する

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