海外美術散歩 09-1 (日本美術は別ページ)

 

ピカソとクレー 09.1 ジム・ランビー 09.1 アーツ & クラフツ 09.1 ヘレニズムの華 09.1
ロスコ展 09.2 ルーブル展(17世紀) 09.2 台北美術散歩 09.3 ミレーとバルビゾン 09.3
福岡アジア美術館 09.4 アンドレ・ボーシャン 09.4 トレチャコフ 09.4 ルーヴル展(こども) 09.4
クレムリン(ウスペンスキー大聖堂) 09.5 マティスの時代 09.5 ラウル・デュフィー展 09.5 廖修平・江明賢 09.5
パウル・クレー 東洋への夢 09.5 ゴーギャン展 09.6 だまし絵 09.6 海のエジプト展 09.6
フランス絵画の19世紀 09.6      

目 次 ↑


フランス絵画の19世紀 横浜美術館

 

グロ:レフカス島のサッフォー 19世紀前半のフランス絵画は、新古典主義、ロマン主義、写実主義などそれぞれに違いはあるものの、サロンを中心としたアカデミズムであったことに間違いがない。フランス革命や産業革命などの影響を受け、印象派のような革新的絵画に移っていったが、この時代にもアカデミズムの絵画は並存していたのである。今回の展覧会は、今まであまり注目されてこなかったアカデミズム絵画に焦点を当て、その後の革新的絵画へと繋いでいた。

 素晴らしい画が多く楽しめた。マイ・ベストのグロ《レフカス島のサッフォー》は、月明りの暗い海に身を投げる女詩人サッフォー。

(2009.6a) ブログ


海のエジプト展 パシフィコ横浜

 古代エジプトの歴史は今から5000年前にさかのぼり、3000年間続くが、その最後の王朝、プトレマイノス王朝はアレクサンドル大王の部下のプトレマイオスによって開かれた。その都アレキサンドリアの一部とその周辺の町は、何度かの地震や津波によって8世紀に海底に沈んでしまった。

 このように1000年以上も海に沈んでいた古代エジプトの海底遺跡を1990年代から調査し、石像、石碑や装飾品、日用品が多く発掘、引き上げられたのである。発掘場所からカノープス、ヘラクレイオン、アレキサンドリアと3つのブロックに展示品が並んでいた。

 今回の展覧会の目玉は3体の巨大石像が並んでいるところ。 540cmの《ハビ神の巨像》は豊作のシンボル。頭上にはパピルスの束。手には供物台を持っている。 500cmの《ファラオ》と490cmの《王妃》の像も威風堂々。

(2009.6a) ブログ


奇想の王国ーだまし絵 Bunkamura

 

1.トロンプルイユの伝統: ペレ・ポレル・デル・カソ《非難を逃れて》・・・額縁の上に人物の一部をはみ出させ、いかにも画の中から少年が出てくるといった錯覚を与えている。

2.アメリカン・トロンプルイユ: デ・スコット・エヴァンス《インコへのオマージュ》・・・背景の板とその前のメモ、そして鳥の手前の割れガラスが仕掛け。

3.イメージ詐術(トリック)の古典: ジュセッペ・アルチンボルド《ウェルトゥムス(ルドルフ2世)》・・・これは今回の目玉。ストックホルム近郊のスコークロステル城から初めて来日したもの。64種類の果物・野菜・花で出来上がった王様のダブルイメージ。

 ドメニコ・ピオラ《ルーベンスの「十字架昇架」のあるアナモルフォーズ》・・・遠近法を利用した歪曲像をその中央に立てた金属円筒に映す。初見。「十字架昇架」の裏側に「絡み合う男女」が描かれているのがご愛嬌。ジャン=フランソワ・ニスロンの『遠近法の不思議』という本に、このアナモルフォーズ作図法が図入りで説明されていた。 エアハルト・シェーンのアナモルフォーズ絵画も面白かった。

4.日本のだまし絵: 描表装、寄絵、影絵、鞘絵。

5.20世紀の巨匠たちーマグリット・ダリ・エッシャー: 今まで見た画が多かった。

6.多様なイリュージョニズム: パトリック・ヒューズの《水の都》・・・ブロックに複雑な切込みを入れ、それぞれの面に建物や水が描かれており、その前を横切ると絶えず異なる景色が見えてくる。眩暈がするアート。今回の展覧会のベストの一つである。

(2009.6a) ブログ


ゴーギャン展 名古屋ボストン美術館

 

 ボストンから来ているのが僅か19点。それも油彩は4点のみ。あとは版画・木彫だから、今回は《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこに行くのか》を中心にした展覧会。

 この謎めいたタイトルを持つ大作は、二度目のタヒチ滞在中に、絶望的な状況で描かれたもの。随分と大きく、そしてひどく青い画である。そしてところどころに肉体の黄色がアクセントとなっている。日本画のように右から左に見ていく横長の画である。タイトルに応じて画を三分割してそれぞれに意味づけるという説が強いようだが、なんとなく不消化である。そこで、大きく分けて人生の生・若・壮・老・死の5つのモーメントに対応していると自分なりに考えてみた。

(2009.6a) ブログ


パウル・クレー 東洋のへ夢 千葉市美術館

 

 クレーが東洋絵画に興味を持っていたということを仔細に研究した奥田修氏の監修による意欲的な展覧会。しかし、これは展覧会というより、むしろ学術発表会である。

 クレーのデッサン《片足で踊る三人の裸の人物》の一人は、《北斎漫画》の踊っている男を見て書いたのではないかとのこと。

 驚いたのは、この時代に日本美術や東洋美術の本がドイツ語で沢山出版されており、実際にこれらをクレーが所蔵していたということである。

 クレーが「中国のイメージ」を描きこんだ画が多い。その証拠として、《中国の・・・》がというタイトルの画がいくつか出ていた。

(2009.5a) ブログ


台湾の心・台湾の情ー廖修平・江明賢 渋谷区松涛博物館

 

 地下は「江明賢の世界」。美しい墨彩画だが、台湾の風景画や民俗画。台湾の美術散歩のような積りで見はじめたが、すぐに画家の思い心が、こちらへ訴えてきた。選ばれた風景に、歴史の重みが感じられるからである。

 2階へ上がると、廖修平の現代版画が待っている。世界各国で版画の技法をマスターしたこの作者の作品の幅は広い。色彩の豊かなものから黒の単彩のものまで、デザイン・シュール・具象・コラージュといった技法の多彩さも目を楽しませてくれた。

(2009.5a) ブログ


ラウル・デュフィー展: 三鷹市美術ギャラリー

 

 デュフィーは、フォーヴの大胆な色彩と奔放な構図を、抒情的な線と透明で豊かな色彩へと高めていった画家。競馬場・音楽・花・収穫などを得意の主題とし、絵画と装飾の両者で自己表現をしている。このデュフィーは私の大のお気に入り画家。彼の展覧会では、会場の雰囲気に埋没して、いつも幸せな気分になる。 今回は2006年4月に心斎橋の大丸で見て以来の個展だから3年ぶり。沢山の画がフランスから来ており、レベルも高い。

 お気に入りはブログに詳しく書いたが、マイベストは、《バッハへのオマージュ》。 J.S.BACHと書かれた譜面台を中心に、楽器が手前に、建物や舟が後方に、そして歌う裸身の女性が空を飛んでいる。

 限りなく不透明な人生だからこそ、デュフィの画の透明感が自分の心に抵抗なく入ってくるのかもしれない。

(2009.5a) ブログ


マティスの時代: ブリヂストン美術館

 

 久し振りに孫が来たので、一緒にブリヂストン美術館に行った。ちょうど「 マティスの時代」の企画をやっていた。この企画は、1.マティスとフォーヴィズムの出現: 1950年ごろまで、 2.フォーヴの仲間たち: それぞれの道、 3.親密なあるいは曖昧な空間: ヴァリエーション、装飾、室内、窓、空間の広がり、 4.色と形の純粋化: 拡張する画面、余白の問題、越境、即興  というレベルの高い章立てになっていたが、小学生たちにはコレクション展示のほうが興味があったらしい。

 「お気に入りの画の絵葉書を一枚ずつを買ってあげる」といったら、二人ともルノワールの《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》をノミネート。しかしショップでは上の子が譲って、本日は出ていなかったルノワールの《少女》を選んでくれた。母親のセレクションは安井曽太郎の《ばら》。

(2009.5a) ブログ


世界遺産クレムリン ロシア皇帝祈りの空間ーヴァーチャルリアリティで巡るウスペンスキー大聖堂: TNM & TOPPAN ミュジアムシアター

 

 1.概要: この大聖堂は、15世紀、イワン3世の時代に改築されたもので、高さは38メートルに達している。ロシア正教の総本山。現在の聖堂は、イタリアの建築家フィオラヴァンティーによってに作られ、イコンは中世ロシアの画家ディオニシーによって描かれたものである。

 2.聖堂内のバーチャルトリップ: 聖堂は、西側の入口から入る。手前に人の場所である「聖所」があり、その向こうは神の場所の「至聖所」となっている。全部で69枚のイコンが集まった壁をイコノスタスと呼び、聖所と至聖所を分けている。イコノタスは、預言者、キリストの生涯、キリスト・マリア・12使徒の3列の構造になっている。

 中央の「王門」には福音書記者が描かれており、向って左には《ウラジーミルの聖母》の複製が置かれている。モスクワがモンゴル軍に脅かされた時に、市民がこの聖母の前で祈りをささげたとのことである。

 3.西側の壁画: 西側、すなわち入口側には最後の審判の壁画が描かれていた。

(2009.5a) ブログ


ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち: 国立新美術館

 

 先日、ブロガーの集まりがあって、「どちらのルーヴル展が良いか?」ということが話題になった。そこで、遅ればせながら新美に行ってきた。

 章立ては、「第1章 誕生と幼い日々」では、フォンテーヌブロー工房の≪乳母の小像≫が良く、「第2章 子どもの日常生活」では、3−5世紀の≪子どものトウニカ≫や≪靴≫がほぼ完全なのに驚いた。

 「第3章 死をめぐって」では、この展覧会の呼び物の≪少女のミイラと棺≫が出ていた。

 「第4章 子どもの肖像と家族の生活」では、ヴァン・ダイク原画のエマイユ≪チャールズ1世の娘たち、王女エリザベスとアン≫が奇麗だった

 「第5章 古代の宗教と神話のなかの子ども」には、赤像式スタムノス≪蛇を絞め殺す幼児ヘラクレス≫があった。

 「第6章 キリスト教美術のなかの子ども」では、アンドレア・デッラ・ロッビア工房の≪幼子イエスを礼拝する聖母≫がベスト。これは、テラコッタに色付釉薬をかけて焼成したもので、青と白の発色がよい。盛り上がっているので、横から見るとマリアとイエスの視線がぴったりと合っていることがわかる。プッサン原画の≪河から救われたモーゼ≫の大きなゴブラン織りもすばらしかった。

 「第7章 生活モティーフとしての子ども」では、≪葡萄を収穫するアモールのタピスリー≫のアモールが可愛らしかった。

 お馴染みの絵画などはともかく、その他の展示品には、パリへ行っても絶対に見ることがないものが多かった。そういう意味で、この展覧会を楽しむことができた。

(2009.4a) ブログ


国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア: Bunkamura

 

 久し振りのトレチャコフ美術館展。前回見たのは東京都美術館で、1993年4月10日であるから、正確に16年ぶりということになる。

 前回の図録を見てみると、油彩は68点。今回の油彩は75点だが、前回と9点もダブっている。これだけ時間が経っていると、それも仕方がなかろう。

 第1章 抒情的リアリズムから社会的リアリズム、第2章 日常の情景、第3章 リアリズムにおけるロマン主義、第3章 肖像画、第5章 外光派から印象主義への5章に分かれている。

 19世紀後半から20世紀初頭にかけての移動派を中心とした作品の流れを気楽に楽しむことができた。

(2009.4a) ブログ


アンドレ・ボーシャン いのちの輝き: ニューオータニ美術館

 

 すっかり暖かくなった東京。桜の花吹雪のなかを四谷見付から赤坂見附へ。今週一杯のボーシャン展。素朴派のこの画家の展覧会は、比較的最近、損保ジャパン東郷青児美術館で見たばかりだが、ここでも素直に画を見る幸せを感じることができる。今回は、ニューオータニ自身の所蔵品の他に、世田谷美術館と長野県下諏訪のハーモ美術館の所蔵品を並べたもの。風景・神話と聖書・花・人物の4章に分けてあるが、全体で23点だから、1時間以内で見終わってしまった。

(2009.4a) ブログ


常設展+特集展: 福岡アジア美術館

 

 入ってスグのいくつかの展示室は、見慣れた常設展であるが、久し振りなので新鮮な感じがする。

  途中からアジアギャラリーAとなっており、「アジア美術のなかのアメリカ」という特集展示が、ちょうどこの日から始まっていた。アメリカという存在が世界で問い直されている今、アメリカを象徴するイメージをとりいれた作品や、アメリカに移住したアジア系作家の作品を通して、アジア美術においてアメリカが持つ意味を考えるというのがこの展示の趣旨。

 アジアギャラリーBは、「はたらきたい!」という特集。これも初日だった。こちらは6月9日(火)まで。働きたくても、働けない。働いても、食べられない。こういう現状を踏まえて、漁業・工業・閉鎖された工場・労働社会問題・農業・休息といったさまざまな「はたらく姿」を紹介していた。

 この美術館はヴァライエティに富んでいて、いつもエキサイティングである。

(2009.3a) ブログ


ミレーとバルビゾンの画家たち: 青山ユニマット美術館

 

 今月一杯で美術館が閉鎖されるので、お別れにいってきた。 ここのシャガールなどはどこへ行ってしまうのだろうか?

(2009.4a) ブログ


台北美術散歩

 

1.台北市立美術館: 台湾の近代美術・現代美術をみるなら断然ここ。全体としては、台湾と日本の美術交流が永年にわたって続いていることがひどく印象的だった。

 1)現代絵画「叛離異象:後臺北畫派」。ここには眼から鱗が落ちるような刺激的な画が並んでいた。

 2)写真展「李鳴GLee Ming-tio 攝影回顧展」。穏やかな写真が並んでいた。

 3)常設展「25年典藏精粹」。松涛美術館の「陳進展」でも見た《悠閨tも出ていた。

 4)ビデオアート展「激情心霊」

 5)「台北美術奨」Taipei Art Award

2.国立故宮博物院: 12年前とは建物がきれいになっただけでなく、展示方法ががらりと変わっていた。常設展は厳選したものに制限し、時代別に展示。空いた展示室を特別展に使っていた。

 2−A.器物参観

 1)常設展: 文明の曙光−新石器時代、古典文明−銅器時代・古典から伝統−秦・漢、玉燦珠光、繋がりと融合−六朝。隋・唐・新しい典型の建立−宋・元、新装飾の時代−明代前期の官営工房、官民が技術を競う時代−明代後期、盛世の工芸−清代 康熙・雍正・乾隆、現代に向かう―清代後期。

 2)特別展: 華麗な彩瓷―乾隆洋彩特別展、碧緑−明朝の龍泉窯青磁。

 2−B.書画参観

 1)常設展: 造形と美意識―中国絵画の展開、筆に千秋の業あり─書道の発展。

 2)特別展: 京華歳朝、再生記−鄭成功画像の修復成果展、巨幅書画、近代書画名品、天上と人間の世界

3.国立歴史博物館: 日本時代の建物で、狭いが、企画の工夫が良かった。

 1)特別展: 絲路傳奇ー新疆文物大展: シルクロード展。「楼蘭の美女」が出ていた。

 2)常設展: 館蔵華夏文物=中華文物ギャラリー

 3)企画展: .天青・秘色ー高麗青瓷展、孫家勤畫展、瀚海蔵珍ー中華文物学会30周年紀念展

(2009.3a) 


ルーブル展: 国立西洋美術館

 

 ルーブル美術館展は何回も見ているが、今回は「17世紀ヨーロッパ絵画」というククリである。早めに西美に着いてみると、「古典主義時代の変革ー新しい「黄金の世紀」のために」という講演会があることを知った。先着145名で、12時から入場券配布・14時講演開始とのことなので、諦め気味にインフォメーション・デスクで尋ねたら、13時30分なのにまだ75番目の入場券を手に入れることができた。

 講演会までの30分を利用して、1階の展示(第T章と第U章)を早足で見てみた。初日なのに結構混んでいるが、観られないほどということはない。ただ小さな画が少なくないので、持参した双眼鏡が大活躍。チラシのフェルメール《レースを編む女》とレンブラント《縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像》以外にも、笑いの画家ハルスの《リュートを持つ道化師》などお気に入りが沢山ある。

 司会は、西美の幸福氏。講演はルーブル美術館 絵画部 キュレーターのブレーズ・デュコス氏。若くてハンサムなフランス男性。同時通訳の日本語をイヤフォーンで聞くが、反対の耳から美しいフランス語が音楽のように聞こえてくる。講演の内容は別記。

  講演会終了後、ブロガーの皆さんとおしゃべりしながら鑑賞したが、この頃には場内が非常に混雑してきた。第V章のお気に入りとしては、キリストの指が透けて見えるジョルジュ・ド・ラトゥールの《大工ヨセフ》、そしてカルロ・ドルチの《受胎告知 天使》と《受胎告知 聖母》は外せない。グェルチーノの《ペテロの涙》がオオトリとなっていた。5時30分の閉館間際には会場が空いてくるので、十二分に楽しめた。その後の懇親会は大いに盛り上がった。

(2009.2a) ブログ

 オフ会: merion, Tak, panda, Nikki, はろるど、とんとん、吉田、へみおら、るる、えりり、わん太夫、みい、とら。


マーク・ロスコ展 瞑想する絵画: 川村記念美術館

 

 川村記念美術館にはロスコルームがあり、有名なシーグラム壁画が7点も掛かっているが、部屋全体が暗くてあまり好きになれなかった。今回は世界のシーグラム絵画が、ワシントンから5点、ロンドンから3点が来て、川村の7点とあわせ、合計15点が一室に展示されていると知って、初日に見に行った。

 シーグラム壁画の説明を読んでいるうちに、ギャラリー・トークが始まったので、これに付くことにした。

 1.ロスコ概説、2.シーグラム壁画の物語、3.シーグラム壁画展示室、4.ヒューストンのロスコ教会壁画、5.黒ー灰色の作品という内容で、とても良く分かった。

(2009.2a) ブログ


ヘレニズムの華: 国際基督教大学博物館

 

 今回の展覧会の副題は、「発掘者カール=フーマンと平山郁夫のまなざし」ということであるが、とくにフーマンのことを知りたかったのである。以下、展示の順序に従って紹介していく。

T.古代ギリシャ文明のあけぼの:ここでは、14−12世紀BCの《蛸文壷》や赤絵式・黒絵式の壷に目が行った。

U.ペルガモン大祭壇とカール・フールマンの発掘: 2007年に訪れたベルリンのペルガモン博物館。その中央に復元された巨大なペルガモン祭壇、とくに神々と巨人族の戦いを描いた浮彫フリーズは今も目に浮かんでくる。展覧会の構成は下記。

 1)ヘレニズム美術、 2)ギガントマキア、3)ペルガモンのモザイク画装・飾床、 4)ランプ、5)陶器、6)青銅器および鉄製品、7)呪術具、8)テラコッタ、9)カール・フーマンによる浮彫フリーズ素描、10)ペルガモン大祭壇の再発見とフーマンの発掘

V.ペルガモン博物館の歩み: 写真などによる紹介。

W.ヘレニズムの東漸: シルクロード、そして奈良へ。

 1)仏教美術の源流とガンダーラ、2)平山郁夫素描

(2009.1a) ブログ


アーツ & クラフツ: 東京都美術館

 

T.イギリス
  T−1 運動の起源 ラスキンとモリス: モリスの新婚の家《レッドハウス》、モリス・ダール・ウェッブの共作のタペストリー《森》

  T−2 ウィリアム・モリス: ラスキンのスケッチ《聖アンブロジウス大聖堂の説教壇》、クレインの壁紙《ヒナギク》、クラウセンの画《壷を持つブルターニュの女》、フランプトンの彫刻《母と子》、モリスの《自画像》、ロセッティのステンドグラス《聖ゲオルギウス伝》、バーン=ジョーンズの《貴婦人と動物のサイドボード》、《ケルムスコット・マナーの内部》、モリスの壁紙見本《果実あるいは柘榴》、モリスの刺繍壁掛け《蓮》や内装用ファブリック《いちご泥棒》、モリス・ダールのタペストリー《果樹園あるいは四季》、モリスが描いた有名な「ジェフリー・チョーサー作品集」

  T−3 都市のアーツ・アンド・クラフツ: フィッシャーの燭台《孔雀》、バーン=ジョーンズの《生命の木》の原画、ヴォイジーの《置き時計》、マッキントッシュの椅子、コンパーの大法衣、ウォールのステンドグラス《聖アグネス》、ベガースタッフ兄弟のポスター原画《ハムレット》

  T−4 田園のアーツ・アンド・クラフツ: スコットのピアノ《マンクスマン》や《屏風仕立ての装飾パネル》

U.ヨーロッパ
 U−1 ウィーン: コロモン・モーザーの《分離派展ポスター》、《ベッドとサイドテーブル》、《アームチェア》

 U−2 ドイツ、ハンガリー、スカンジナビア、ロシア: ノルウェーのハンセンの《扉用タペストリー》

V.日本
 V−1 伝統的な民衆の工芸品: 木喰のお地蔵さん、朝鮮の民画、大津絵、スリップウェア、泥絵

 V−2 民芸運動の最初の成果「三国荘」: 柳宗悦らが建てた「三国荘」のしつらえ。

 V−3 民芸運動の近代工芸作家: 冨本憲吉、河井寛次郎、バーナード・リーチ、浜田庄司、棟方志功、芹沢_介など

(2009.1a) ブログ


ジム・ランビー「アンノウン プレジャーズ」: 原美術館

 

 作者のスコットランドのジム・ランビーは、床一面のテーピングによって変容させた空間に、デコレーションした身近な日用品を配置して、われわれに新しい視覚体験を与えてくれていた。作者はこれを「未知の快楽 アンノウン プレジャーズ」と名付けているが、わたしの場合には、これはいちおう納得できるものであった。

(2009.1a) ブログ


20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代: BUNKAMURA

 

クレー:リズミカルな森のらくだ ドイツ、デュッセルドルフのノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館の20世紀美術コレクション(K20)。20世紀前半の23作家の展示は、作者別に4章に分かれている。しかしなんといっても最後のクレーが今回の展覧会の中心で、57点中27点がクレーである。

1.表現主義的傾向の展開: マティス、ドラン、ブラック、マルク、グロス、ベックマン、マッケ、スーチン、シャガール。この中で面白いのはフランツ・マルクの《3匹の猫》。手前の喧嘩に勝った白黒の猫が対角線上に脚を伸ばして威張っている。負けた赤猫と黄猫は大きいくせに眼を伏せている。動きのある未来派的作品である。

2.キュビスム的傾向の展開: ピカソ、グリス、オスカー・シュレンマー、ブラック、モランディ。ピカソの《鏡の前の女》は、マリー・テレーズ・ワルテル。青・赤・黄・緑の色が美しい。

3.シュルレアリスム的傾向の展開: カッラ、マグリット、マン・レイ、エルンスト、イヴ・タンギー、リヒャルト・エルツェ、ミロ。マグリットの《とてつもない日々》は、男が裸の女性に迫るところ。両者は前後に一体化しているようだが、よく見ると女性の足の陰影はバックの青い垂れ幕の向こうに消えている。マグリット独特のシュールな世界である。

4.カンディンスキーとクレーの展開: カンディンスキー、ロベール・ドローネー、クレー。チラシの表紙に載せられているクレーの《リズミカルな森のらくだ》。矩形のレンガ様のバックに色彩豊かなラクダが溶けこんでいる。赤い耳と黒いこぶは3角形であり、レンガの中の円と響きあっている。ラクダは音楽に合わせ、ゆっくりと歩んでいる。

(2009.1a) ブログ