(前 期) 有名なコレクションなのだが初見。16年ぶりの公開ということなので前期が終わらぬうちに見に行った。入ってすぐの「展示室1・2」に、師宣、春信、清長、歌麿、北斎、広重、写楽の有名作品がプロローグとして並べられていた。師宣の《衝立のかげ》の色彩と色気、春信の《風俗四季仙 二月 水辺梅》の構図とコントラスト、清長の《色競艶婦姿 床入前》の色彩と色気、歌麿の《高島おひさ》の雲母摺、北斎の《山下白雨》のぼかし、写楽の《三世市川高麗蔵の志賀大ヒ七》の雲母摺などは目を見張るものだった。
「展示室3」は高橋誠一郎資料。以後の展示室は、1.浮世絵の黎明、2.浮世絵の革命、3.浮世絵の展開、4.幕末浮世絵ー北斎、5.幕末浮世絵ー広重、6.明治の浮世絵ー伝統の終息と分けて展示されており、浮世絵の歴史を俯瞰することが出来るようになっていた。初見の作品も少なくなかった。
「展示室4」のお気に入りは、奥村利信の《床之内三幅対 中 きやらとめ風》・・・伽羅の香、鈴木春信の《子供の遊び》・・・・兎の影絵、喜多川歌麿の《当時全盛美人揃 扇屋内花[扇]》・・・美しい着物の模様。
「展示室5」では、歌川国芳の《松尽 高砂の松》・・・翁と媼や蓬莱山を模した島台を背景にした若い女性、葛飾北斎の《箱根》・・・関所。
「展示室6」は北斎の見慣れた続物。「展示室7」の歌川広重の作品は見慣れたものが多く、わずかに《白梅に寿帯鳥》の空摺が目立つだけ。月岡芳年には見事な作品が多かったが、やはり見慣れてしまっている。しかし肉筆画の《日向の景清》の暗さには心打たれた。小林清親の光線画《浜町より写 両国大火 明治四年一月廿六日出火》は良い〆だった。
(2009.10a)
ブログへ
(後 期) 16年ぶりの公開の有名なコレクションということで前期を見たが、玉石混交なので図録を買うだけにして中期はパスした。中期のブログの中には展示方法について酷評しているものがあったので、後期に入ってもう一度確認することにした。入ってすぐの「展示室1」にプロローグとして並べられている師宣の《吉原の躰》の食べ物はなかなか面白いのだが、無色なので迫力がない。春信の《風俗四季仙》は今回だいぶ沢山見ることができたので一つの収穫だった。春信の《双六のけんか》の緑色が良い。清長や歌麿は見慣れたものが多く、保存状態もそれほど良くないのでガッカリ。北斎はマアマアだが、広重の保存状態はきわめて良好。
「展示室2」の写楽《市川蝦蔵の竹村定之進》の雲母摺が凄い。バックが銀色に盛り上がっている。これが今回の展覧会のベスト・オブ・ベスト。
「展示室4」のお気に入りは、石川豊信の《水鶏にだまされて》、きめだし技法のみられる鈴木春信の《白象と唐子》、勝川春英の《金時の辻宝引》。
「展示室5」では、歌川国芳の《名画六枚屏風》、英松屋長喜の《難波屋店先》。
「展示室6」は北斎の見慣れた続物。「展示室7」の歌川広重の作品は見慣れたものが多いが、藍が美しい。今回は月岡芳年に素晴らしいものが多かった。お気に入りは《五条橋》と《平維茂戸隠山鬼女退治之図》。
(結 論) 1.高橋誠一郎コレクションの中には保存状態の良いものが含まれている。写楽が超Aクラス、春信、広重、芳年はほとんどAクラス。ただし最近海外から素晴らしい保存状態の浮世絵がたくさん里帰りしたが、これと肩を並べられるのは半数程度である。前中後期に分けて出展するほど素晴らしいものはそれほど多くなかった。清長、北斎、歌麿にはBクラスのものがたくさん含まれていた。虫食い・折れ線つきの歌麿など見たくなかった。
2.展示方法に改善の余地あり。ガラスと絵が遠く、単眼鏡を使ってもよく見えず、ガラスに頭をぶつけている人が多かった。また、キャプションや図録の説明が不十分であきれた。16年ぶりの展覧会なのにガラスキ状態なのも当然である。次回、16年後に公開する時にはもうちょっとましな展覧会としてもらいたい。これでは高橋氏がお気の毒である。
(2009.11a) ブログへ
|