日本美術散歩 10-2 (海外美術は別ページ)
春爛漫ー長谷川町子 10.3 | 奥村土牛 10.4 | 水浴考 10.4 | 狩野派 10.4 |
小川芋銭 10.4 | 王者の華 10.4 | 金沢文庫 10.4 | 棟方志功 10.4 |
東博平常展 10.4 | 阿修羅像ーVR 10.4 | 国芳 木曽街道六十九次 10.4 | あおひー「すきいとる」 10.5 |
新国宝・新中美 10.5 | お江戸の絵画 10.5 | 山本容子 10.5 | 長谷川りん二郎 10.5 |
若冲ーアナザーワールド 10.5 | 公文書館 常設展 10.6 | 近美 常設展 10.6 | 細川護熙展 10.6 |
山本丘人展 10.6 | 近代美人版画展 10.6 | 北海道立近代美術館 10.6 | 浮世絵入門 10.6 |
目 次 ↑
1.広重《東海道五拾三次 保永堂版》: 扉があるところから、これはシリーズが4年かかって完成した後、画帖にまとめられたものとのこと。入っていた初摺など早期の摺りは下記。 《日本橋・朝の景》: 空の左右に雲があるので初摺。 2.紅絵・漆絵: 奥村政信の《踊り一人立》は、透明感のある色彩で、紅の色残りも良かった。 3.錦絵: 春信の《梅の枝折り》、《柿の実とり》、《色子と供》、清長の《当世遊里美人合 橘妓と若衆》、《風俗東之錦 武家の若殿と乳母、侍女二人》、 《社頭の見合》、歌麿の《青楼七小町》、《美人五面相 犬を抱く女》がお気に入り。 写楽の《二代目嵐龍蔵の金貸石部金吉》、《三代目坂田半五郎の藤川水右衛門》、《八代目森田勘弥の駕篭舁鶯の次郎作》は黒雲母がかなり残っている。 豊国の《役者舞台之姿絵 高らいや 三代目市川高麗蔵の千崎弥五郎》・《同 やまとや 初代坂東蓑助の早野勘平》、北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》、広重の《近江八景》、《木曾海道六拾九次之内 洗馬》、《雪月花》、《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》も良かった。 (2010.6a) ブログへ |
A. 特別展「北の日本画展」: 25年間続いている展覧会。「継承と革新」という副題が付いている。 やや古めかしい伝統的な画と現代美術そのものといえる革新的な画が混在している。どちらも大作が多いのでなかなかの迫力。 革新的な画のお気に入りは、蒼野甘夏の《Esculo》と平向功一の《午後の訪問者》。 立派な図録を頂戴した。多謝。 B. これくしょん展: いずれも面白かった。 1.阿部貞夫 ―彫波の世界 2.原有徳・多面体 地球の部品掌の中にあり 3.現代ガラス 素材との対話 (2010.6a) ブログへ |
新版画の前後の美人画の展覧会。 橋口五葉、伊東深水、鳥居言人、小村雪岱などは以前にも見たものが多いのだが、美人には何回会っても良い。 水野年方の《今様美人》、小早川清の《下田のお吉》、創作版画集の《日本女俗選》は初見。 川瀬巴水の唯一の美人画《ゆく春》に再会。 (2010.6a) ブログへ |
この画家は、大和絵調の表現を出発点とし、戦後は力強い山水画的表現を展開し、晩年には色彩豊かな心象的な表現へと変貌している。 今回の展覧会では、丘人作品の根底に一貫して流れる抒情性に焦点をあて、約60点の代表作を3章に分けて紹介している。 〈第一章〉1921年〜1950年: 写実的な作品。 〈第二章〉1951年〜1966年: 力強く峻厳な雰囲気の作品。 〈第二章〉1951年〜1966年: 力強く峻厳な雰囲気の作品。 (2010.6a) ブログへ |
細川元首相は60歳で政界を引退した後、作陶や書画にいそしんでおられるということは知っていた。 しかしどの程度の作品のものなのかは見てみなければ分からないと思っていたので良い機会だった。 全体として、予想以上の作品が並んでおり、展示空間の配列もとても良かった。殿様芸以上であることは確かである。 (2010.6a) ブログへ |
若冲の水墨画を中心に、関連する着色の作品、若冲以前の黄檗絵画の展覧会。 章立ては、1.若冲前史、2.初期作ー模索の時代、3.着色画、4.晩年期ー多様なる展開。 前期・後期あわせて165点という多数の展示である。 (前期) ここではサブタイトルのアナザーワールドにちなんだ記事にとどめる。 《乗興舟》: 今回のチラシともなっている木版画一部は何回か見ているが、全体を見たのは今回がはじめて。大阪までの淀川の川下りの悠々たる風景。版木の上に紙を置いて、表から墨を乗せて形を写し取る正面摺であるから、白黒逆転した拓本のような世界である。実際の版木も展示されていたので、版画と比較しながら見ることができた。 《玄圃瑤華》: 木版正面摺の画譜である。これも白黒逆転のアナザーワールド。対象は若冲お得意の動植物。葉っぱに穴があいている。 《花鳥版画》: 木版・合羽刷多色摺版画である。木版画で型紙を使って素晴らしい色彩を乗せている。これも背景が黒であるから、アナザーワールドに属するといってもよいだろう。一枚、実際に団扇に貼り付けられていたものが出ていた。驚くべきものが残っている。同じ図柄で団扇に貼られていないものも出ていたので、両者を比較して楽しめた。 《蓮池図》: 対決展で見た《仙人掌群鶏図》の裏面に描かれた襖絵。現在は軸装となっているが、並べて展示されているので、襖絵の雰囲気を味わうことができる。水墨であるが、版画のような印象を受ける。余白が多いことや蓮が次第に萎れていく様子など《仙人掌群鶏図》と対照的な彼岸、アナザーワールドが描かれているともいえる。 (後期) 《鯨と象図屏風》: これは近年再発見された作品で、すでにMIHO MUSEUMや静岡県立美術館で展示されており、関東からも出かけた若冲フリークも少なくなかったようであるが、わたしは「果報は寝て待て」で、今回になってしまった。 右隻は水辺の白象。ゆで卵のような耳が印象的である。牙や尻尾も面白い。目がチョット淫靡な気がする。背中の牡丹には白く輪郭が残っている。右上の斜めの部分は何を描いたのだろうか。 左隻は汐を吹く鯨。鯨の体には「たらしこみ」、その縁は白く残っている。汐は生地を残し、背びれは刷毛目のように描かれている。そして波頭が独特。 《白象群獣図》: この升目描きの画を見るのは3回目。精度の高い技法で、印鑑も押されている若冲の真筆である。 静岡県立美術館の《樹下鳥獣図屏風》: たまたま聴講した伊藤紫織氏の講演会「伊藤若冲と唐画」では、この升目描きを「伝伊藤若冲」であるとのスライドを出され、おそらく若冲の死後、弟子たちが若冲に対するオマージュとして共同制作したものであろうとの考えを述べておられた。 《葡萄図》、《蔬菜図押絵貼屏風》、《隠元豆・玉蜀黍図》、《蜃気楼図》も後期のお気に入り。 |
この展覧会の主役は《猫》。何年もかけ、納得いくまで観察しないと描かない長谷川の画の完成を待たずして飼い猫「タロー」は死んでしまい、後に頼まれてヒゲの半分だけを描き込んだという逸話が残っている。 長谷川は対象物の内面をも描き出そうとする画家の執念がこもった画を描くようになっていったようである。《林檎》などは、何回描き直しても気に入らず、ついに林檎を消してしまい、新しい林檎を買いに出かけたという経験も述べられていた。《柚子の木》の土の色も、4−5月の明るい色でなければ気に入らず、翌年になると周りの木が伸びて陰になって明るさがなくなって、また描けなくなってしまったというエピソードも残っている。このような偏執狂的な話を自分で書き残しているのも長谷川の特徴である。 そのうち、対象が次第に相互に独立して無関係なものとなり、超現実性を帯びてくるような画が沢山描かれるようになった。現場主義のリアリズムを貫きながら、幻想性をかもし出すという矛盾した二つの要素が一つの画から出てくるようになったのである。このことは《芭蕉の庭》、《玩具と絵本》、《アイスクリーム》などを見れば明らかであるが、このようなマグリットを思わせるシュールな画をもって長谷川の到達点とすべきなのではないかと思った。 (2010.5a) ブログへ |
200点以上の作品を楽しめた。大部分は版画だが、最近の油彩画も一部に展示されていた。 1.PRINTS: 初期の作品。 2.静物画: 身近なものをテーマにした小作品の集団をいろいろな形で張り付けたり、並べたりしている。 3.あのひとが来て: 谷川俊太郎の詩に触発されて彫った作品集。音楽をCDとして付けたものである。 4.Jazzing: 谷川賢作の音楽付きジャズ絵本(講談社 2006)の原画。色彩が豊かになり、表現も分かりやすくなってきている。 5.himegimi@heian: 2009年に講談社から出版された「姫君たち」の原画。一言でいうと「平安時代に迷いこんだアリスの物語」。 6.ふしぎの国のアリス: ここには大きな油彩が登場していて楽しめた。 7.過ぎ行くもの: 鉄道博物館のステンドグラスの原画。 (2010.5a) ブログへ |
素晴らしいコレクションの館蔵展であり、「撮影OK」、ユーモアのある「板橋タイトル(以下 IT)」、そして「お座敷コーナー」というこれぞ visitor friendly な展覧会である。 探幽《富士山図》、清原雪信(久隅守景の娘)《源氏物語 浮舟図》、周信(木挽町家三代)《蛤観音図》、常信(木挽町家二代)《四季花鳥図屏風》、英一蝶《不動図》、英信(伊川院)《花鳥図》、探信(守道)《秋草群虫図》、章信(浅草猿屋町代地家第六代)《内裏雛図》、養信(晴川院)《唐画帖》、了承《深川水場家四代)《秋草図屏風》、河鍋暁斎《龍虎図屏風》など狩野派の作品に見るべきものが多かった。 (2010.5a) ブログへ |
新指定の国宝は《伊能忠敬関係資料》と《越中国射水郡鳴戸村墾田図》の2点。今回は新指定の重美のほうに興味のあるものが多かった。 絵画では、瑞谿周鳳賛《淡彩哦松図》(文化庁、室町時代)、聖徳太子絵伝(東博、鎌倉時代)・・・色が良く残っており、沢山の物語が描かれている。亜欧堂田善《浅間山図》、前田青邨《洞窟の頼朝》(大倉集古館、昭和時代)、《法然上人絵伝》(山梨県立博物館、鎌倉時代)、《釈迦三尊十八羅漢図》(甲府一蓮寺、鎌倉時代)、狩野孝信《賢聖障子》(仁和寺・京博、桃山時代)。 彫刻では、快慶《木造地蔵菩薩立像》(藤田美術館、鎌倉時代)がダントツに良かった。なで肩で繊細な感じの美しい菩薩さま。線的な衣紋が特徴的である。口紅の色も悩ましい。 (2010.5a) ブログへ |
あおひーさんのソフトフォーカス写真展の第2弾。今回は一人静かに訪れたつもりだったが、芳名帳をみると有名な山下裕二さんや芸術ブロガーのogawamaさんが直前に訪れておられていたらしい。 あおひーさんからいただいた案内状には、「デジタルカメラの耳元にそっとウソをついて、もうひとつの見えない景色をすくいとる」という難解な説明がついていた。 一番奥に作者が坐っておられたので、ギャラリー・トークをしてもらった。というよりか、わたしが勝手な感想を述べてきた。前回はB&Wのデジャブ的作品だったが、今回はカラー作品が大多数でかなり印象が違う。ソフトフォーカスであることには変わりはないが一段と進化しているようだった。 (2010.5a) ブログへ |
国芳の「木曽街道六十九次」の《目録》1枚、《日本橋》ー《京》71枚の合計72枚が一挙に見られる展覧会。国芳ブームはまだまだ続きそう。広重・英泉の「木曽街道六十九次」は旅景色であるのに対し、こちらは国芳のユーモアにとんだ物語絵。 このシリーズでの画面の中に小さく開けられたコマ絵には、街道の風景も描かれ、一つの作品で、物語絵と名所絵の二つを楽しめる。コマ絵の形や題名の飾り枠も物語と関連付けられ、ちょっとしたクイズとなっていた。 また通常描かれる見せ場を少し外して描いたり、あるいは見せ場の一部を省略したりして見ているものに「わかるかな!」と挑戦しているような絵もいくつかあった。 (2010.4a) ブログ@、ブログAへ |
まずは藤原不比等、光明皇后、長屋王、金光明最勝王経などの説明。ついで興福寺西金堂址の映像。 鎌倉時代の《興福寺曼陀羅》(京博)の西金堂の部分に阿修羅が描かれているが、(今日われわれが見ている興福寺の阿修羅像とは明らかに異なっている。 そして阿修羅の三つの顔の比較。ナビゲーターの説明では、@ 向って左は、下唇を咬んでおり、揺れる心を表し、A 向って右は、心の内面に向う厳粛さを表し、B 正面は、過去の罪を懺悔して仏の教えに従っているとのこと。わたしとしては、@ 向って左=童子、 A 正面=少年、 B 向って右=青年といった年齢差を感じた。 (2010.4a) ブログへ |
「国宝室」は《古今和歌集 元永本》。「仏教の美術 ―平安〜室町」には、国宝《十六羅漢像》の第三尊者と第八尊者、重美の《聖徳太子像》−南北朝時代・14世紀ー山形・慈光明院蔵。 「宮廷の美術 ―平安〜室町」には、重文《紫式部日記絵巻》−鎌倉時代・13世紀ーが出ていて驚いた。詞書も絵も言葉に尽くせぬほど美しい。これは「日野原家本」という伝本で、紫式部の許へ忍ぶ道長なども描かれている。 「禅と水墨画 ―鎌倉〜室町」には、室町時代・15世紀、伝周文の《山水図》や霊彩《文殊菩薩像》。 「屏風と襖絵 ―安土桃山・江戸」には、対決展で見た尾形光琳の重文《孔雀立葵図屏風》や狩野探幽の重文《士農工商図屏風》と土佐光起の《女房三十六歌仙図屏風》。その他には狩野探幽《尾長鳥図、熊斐の迫力のある《浪に鵜図》、狩野伊川院〈栄信〉の《草花群虫図》、山本梅逸《花鳥図》、土佐光則《貝尽図》、酒井抱一の《四季花鳥図鑑》など。 「浮世絵と衣装 ―江戸 浮世絵」には、岩佐又兵衛の《風俗図》。これは初見。円形と団扇型の対幅である。 「彫刻」の部屋では、鎌倉時代・13〜14世紀の重文《愛染明王坐像》に驚いた。修理が完了したばかりだとのことである。明王の朱色だけでなく、隣に置かれた厨子も素晴らしいものだった。 「歴史資料シリーズ−特集陳列:博物図譜─桜を中心に─」では、狩野探幽の《草花写生図巻》、円山応挙《写生帖》もとても巧かった。粉本の現物がこれ。さだめし良い教育資料だったのだろう。 (2010.4a) ブログへ |
南砺市立福光美術館の所蔵作品展である。 ポスターの白黒の板画は《華狩頌》。花という美しいものを狩るのに弓矢や鉄砲はいらないということである。 ポスター下部の裏彩色された板画は《沢瀉妃(おもだかひ)の柵》。棟方が小学生のときに田圃で見つけた沢瀉にはじめて「美」というものに気付いたとのこと。それが擬人化されてこの色白の美人になっている。 棟方は川上澄生の《初夏の風》に触発されて木版画を始めたとのことであるが、《星座の花嫁》はいずれも川上風。 《運命頌板画柵》の4点。ベートーベンの「運命」のような感じのものにしてほしいという倉敷レーヨン大原総一郎氏の注文に応えたもの。白黒の板画はまるで現代絵画のよう。 おなじみの《二菩薩釈迦十大弟子》、、《鐘渓頌》24点のうちの5点、《流離抄板画柵》31点の内10点、河童がでるという《瞞着川板画巻》の上下巻、さらに自画像である河童を描きこんだ《松河伯の柵》、夫人を描いた《紫袂の柵》が並んでいた。 肉筆画すなわち倭画が何点か展示されていた。《福光風光の源玄》、4点の《四季福光風景》、八曲一双の屏風《美魅寿玖の図》がそれである。ミミズクの1羽は本人らしいとのこと。 (2010.4a) ブログへ |
神奈川県立金沢文庫80年記念展である。後期の目玉、国宝の四将像が4点揃って出てきた。《北条実時像ー鎌倉ー画像A》、《北条顕時像ー鎌倉ー画像B》、《金沢貞顕像ー鎌倉ー画像C》、《金沢貞将像ー南北朝ー画像D》である。鎌倉時代のものは残念ながら退色が著しいが、なんとか表情をつかむことができる。 別な壁には面白い白描が3点掛けられていた。《摩尼珠像》は2匹の多頭の龍が3つの宝珠が置かれた塔を支えており、《三部四処字輪観図》に描かれた大日如来には多数の朱印が押されており、《瑜祇塔図》では大亀がその背中に宝塔を支え、その両脇に日輪が描かれ、天人・楽器・霊芝などが浮遊していた。 重文の《十二神将像ー鎌倉》はなかなかである。今回は戌神・寅神が出ていた。《十二天像 甲本ー室町》の色彩は本当に美しい。後期には梵天・毘沙門天・伊舎那天・月天出ていた。県文の《三千仏図(甲本)ー鎌倉時代》には恐れ入った。右から過去仏の阿弥陀如来、現在仏の釈迦如来、未来仏の弥勒菩薩が描かれ、その周囲に3000の仏の小像が描かれているのである。その横に同じく県文の《千仏図(三千仏図乙本、過去幅)ー1350年》があり、これにも驚いた。椅子に座って合計(3000+3)+(1000+1)=4004体のホトケサマを見ることができた。 元の陸信忠筆の《十王図(百日平等王)》や色鮮やかな《釈迦三尊像(李朝絵画)》、江戸名所図会の挿絵を描いた長谷川雪旦筆の水墨画《維摩居士図》なども楽しめた。 (2010.4a) ブログへ |
展覧会の副題は「名古屋開府400年、徳川美術館・蓬左文庫開館75周年記念 春季特別展」。牡丹は「百花の王」、「富貴の象徴」として、古くから美術工芸に表されているが、今回の展覧会はそのような美術工芸品に花開いた牡丹の姿を全国の美術館から集めて展示した大展覧会である。 第一展示室は蓬左文庫展示室。ここには中国・朝鮮・琉球の牡丹美術品が展示されていた。 第二展示室は徳川美術館の第7〜9展示室。こちらには日本の牡丹美術品が多数並んでいる。 「神仏に捧げる花ー宝相華と牡丹」、「百花の王・百獣の王ー獅子牡丹文の系譜」、「書を彩る牡丹文」、「牡丹を描く」、「牡丹で飾る」、「姫君の牡丹」、「牡丹を知る 牡丹を生ける」というセクションに分かれ、素晴らしい作品が並んでいた。 (2010.4a) ブログへ |
この美術館の「木村定三コレクション」には、熊谷守一の他に小川芋銭の作品が多い。 これに茨城県近代美術館などに所蔵されている小川芋銭の作品を加えて展示したものであるが、それだけでは数が不足していたらしく、平福百穂、森田恒友などの珊瑚会の画家や友人・小杉未醒らの作品も並んでいた。 展覧会の構成は、1.彰技堂、2.漫画と挿絵、3.水魅山妖、4.自然と田園、5.俳句と俳画。なんといっても芋銭の作品では河童が秀逸である。 (2010.4a) ブログへ |
有名な障壁画のパネルが工事中の石垣の上に展示されていた。 天守閣の2階が第一会場。 1.山本派: 探幽に師事した山本宋泉がおこした京都在住の江戸狩野派町絵師集団で、第3代の山本素軒、第4代の山本宋川、第5代探泉の門弟の山本探淵の作品が出ていた。 2.鶴澤派: これも探幽に師事した鶴澤探山がおこした江戸狩野派町絵師集団。初代深山と彼の若き日の号「法橋幽泉」を使った絵がいくつも出ていた。第2代の鶴澤探鯨の作品が多数、探鯨の門人吉田元陳や石田幽汀の作品を見ることができた。石田幽汀は円山応挙の師としてつとに有名である。第3代の鶴澤探索、第4代鶴澤探泉、第5代の鶴澤探春、第6代の鶴澤探龍のほか、傍系画家の鶴澤探旭の作品を楽しんだ。 3.江戸狩野派: 芝愛宕下家8代の狩野探龍、狩野探水、木挽町家10代の狩野勝川院、木挽町6代英泉院に師事した岩井泉流、鍛冶橋7代狩野探信守道、鍛冶橋9代の狩野探原、深川水場家の絵師狩野一学の良い絵が多かった。 4.京狩野派: 5.地方の狩野派: 高松の狩野永笑、尾張の松野梅山・吉川義信、大阪の葆光斎など知らない絵師の作品にも遭遇した。 6.その他: 高久隆古の《春秋花木図屏風》は空白が多い点は探幽的であるともいえるが、やまと絵と南画を学んだ絵師である。 1階に下りると、そこは第二会場。大きな名古屋城の襖絵が並んでいた。狩野探幽の《雪中梅竹鳥図襖ー本丸御殿表書院一之間北側襖》、《桜花雉子図襖ー本丸御殿表書院三之間北側襖》、狩野探幽の弟 尚信の門人、清野一幸の作品、《紅白梅図屏風》などである。 (2010.4a) ブログへ |
水浴を題材とした美術は、神話や聖書に立脚した「水浴図」以降、無数といっても良いほど存在している。これらの「水浴図」を分析すると、@裸身に対する官能的な欲望のみならず、A人間と自然の関係や生と死につながる根源的な主題を含んでいる。 水と身体: 新海竹太郎の《ゆあみ》、樋口五葉の新版画《浴場の女(ゆあみ)》、山本鼎の創作版画《水浴》、満谷国四郎の油彩《行水》、青木繁の《運命》、坂本繁二郎の《水より上がる馬》が出ていた。 水浴図をめぐる視線のドラマ: 水浴図の主題は、美しい裸体を描くことよりも、裸体をめぐる欲望への誘惑と禁止の緊張関係に裏打ちされた視線の交錯にあるとも考えられる。 ピカソの《ラ・ガループの海水浴場》、梅原龍三郎の《ナルシス》、ゲリー・ウィノグランドの《トラビス湖のヒッピーの谷−テキサス州オースティン》でも視線が交錯している。 生と死のはざま: 楢橋朝子の写真 half awake and half asleep in the water が5点出ていた。いずれも水面に浮かぶ彼女の不安定な視点から水上・水面の両方を見ており、題名の「半醒・半睡」で表されているように「夢とうつつのはざま」、一歩進んでいえば「生と死のはざま」を漂っているものであるともいえる。 浴室の悪夢: 浴槽や柩に溜った水面に自分の姿を映し出すときに人間不在の「水浴図」が完成する。香月泰男の《水鏡》にこれを見てとることができる。 (2010.4a) ブログへ |
広尾に移った山種美術館の「開館記念特別展W」。 第1章: 土牛のあゆみー大いなる未完成ー 1928年の《雨趣》や1930年の《枇杷と少女》は情緒があるが、自分では未完成と思っているのだろう。1947年の2匹の《緋鯉》も力強い。白い《聖牛》が美しい。母牛と子牛である。《舞妓》ははっきりとした顔立ち。《城》は姫路城で、セザンヌの影響を受けている。《踊り子》のモデルは谷桃子。《浄心》は中尊寺の荘厳な仏像《一字金輪坐像》。1958年の《那智》は傑作。《鳴門》は何度か見ているが、渦に気をとられて、遠くの金色の島影を見落としていた。《蓮》の色彩のコントラストは小気味よい。《稽古》は横綱「栃錦」。《門》は、姫路城の「はの門」。見事な構図と写実である。《茶室》は大徳寺真珠庵。同行の家内はお茶をやっているので、「茶室の絵は珍しい!」と興奮ぎみ。1976年の《北山杉》、1977年の桜《吉野》、1984年の兄弟牛《こうし》もなかなか良かった。 「トピック1: 清流会」のセクションでは、《蛤》の集団、古九谷の瓶に生けられた《泰山木》の花、《初夏の花》鉄線が良かった。 「トピック2: 干支の動物たち」のセクションでは、小品ながら面白い絵が揃っていた。一番のお気に入りは《戌》。 第2章: 土牛のまなざしー醍醐の桜と四季折々の草花 《罌粟》や《花菖蒲》も良かったが、何といっても《醍醐》がこの部屋の他の作品を圧していた。これは醍醐寺の三宅院の枝垂桜。淡いピンクの花と緑がかった幹の取り合わせが良い。 (2010.4a) ブログへ |
近くの桜の名所は「桜新町」。そこには長谷川町子美術館もあり、収蔵コレクション展「春爛漫」が開かれている。長谷川町子は美術品コレクターとしても有名。 1階の展示室にはメジャーな画家の作品が展示されている。特にシャガールの6点が目立っている。その中では、《花とエッフェル塔》・《結婚式のヴァイオリニスト》が良かった。岡鹿之助の《献花》・《三色すみれ》、中川一政の《薔薇》・《向日葵》もとても良い。藤田嗣治のインク画《猫》や長納魚竹の木彫《仔猫》がとても愛らしかった。 2階の展示室にはお目当ての「春爛漫」。部屋全体が桜の花の絵や弦田英太郎の舞妓の絵で華やいでいる。ポスターに使われている岡信孝の《醍醐の桜》は見事な枝垂れ桜。続くお気に入りは、加山又造の夜桜《春宵》。そして真打登場!三栖右嗣の枝垂桜のオンパレード。中央に三春の滝桜を描いた500号の《爛漫(大)》、その右に盛岡市内の米内の枝垂桜《水辺爛漫》、左に有名な三春の滝桜のそばの枝垂桜が並んでいる。桜の花びらが一枚一枚丁寧に描かれている。その他の花の絵としては、吉田善彦の《浄瑠璃寺の桜》、那波多目功一の《爛漫の春》、奥村土牛の《桃》、平子真理の《渓桜》、木彫としては神保琢磨の《満開》が印象的だった。 藤田喬平の2点のガラス飾筥が素晴らしかった。「天平の春」は金色で満開の桜、「室町の花」は銀色で散り行く桜。両者のコントラストは見事。 2階の「町子コーナー」は同行の孫たちのお気に入り。 (2010.3a) ブログへ |