素晴らしい保存状態で有名なベルギー王立美術歴史博物館及び王立図書館のコレクション展。
最初に、鈴木春信の6点。国内の日焼けしたような春信とはまったく違うフルカラーの錦絵が並んで登場するので、あっと驚く。退色しやすいといわれる紫がしっかりと保存されている。藍や紅も美しい。この春信の色彩を見ただけで、この展覧会に来た甲斐がある。
次に写楽。これも保存状態がすこぶる良い。例えば、《初代中島右衛門のぼうだら長左衛門と初代中村此蔵の船宿かな川やの権》。剃りあげたばかりの月代のみずみずしい淡青が目に飛び込んでくる。
ベルギー王立図書館蔵の写楽《四代目岩井半四郎の鎌倉稲村が崎のおひな娘おとま実は楠政成女房菊水》とベルギー王立美術歴史博物館蔵の写楽《三代目市川高麗蔵の廻国の修行者西方の弥陀次郎実は相模次郎時行》は世界中に1点のみ確認されるもので、もともと同じ狂言に取材した組み物であり、本展で同時に展示されているのは見ものである。他にも世界に1点しか確認されていない作品として、大首絵《二代目嵐龍蔵の奴なみ平 とら屋虎丸》も出展されていた。
続いて歌麿。本展では、歌麿の代名詞とも言える美人大首絵の名品として《当時三美人−おひさ・豊ひな・おきた》、《冨本豊ひな》、《高島おひさ》が出ていたが、個人的には衣裳や腕の輪郭線を大胆に省略した《錦織歌麿形新模様 浴衣》が気に入った。団扇の骨の表現も素晴らしい。
歌麿の《針仕事》は、紗を透けてみえる女性が美しい。また《高名美人見立て忠臣蔵 十二段つづき》が7枚出ていた。後期にも引き続いて出るようだ。歌麿の幽霊絵が3点出ていて驚いた。勝川春章の《金太郎と山姥》、鳥居清長の《当世遊里美人合 蚊帳の内外》、鳥文斎栄之の5枚続《吉野丸船遊び》もとても良かった。
北斎では、素晴らしい摺の《冨嶽三十六景 凱風快晴》の他に、戯画の《鳥羽絵集》が出ていて楽しめた。版本では、北斎の《絵本隅田川 両岸一覧》の色彩が良く、北斎の弟子、魚屋北渓の《硝子瓶の中の金魚》や岳亭春信の《水辺の三匹の蟹》が面白かった。
広重の《仙人二幅対 林和靖》は古い軸を取り込んだ面白い趣向。《江戸高名会亭尽 向島》は濃厚な色彩が残っているし、《魚づくし 鮎》は上品な色が保存されている。
歌川国貞の《大当狂言之内 菅丞相》は凄い迫力である。その後、大人気役者絵師となる国貞の出世作といわれ、あまり役者絵が好きではないわたしもおもわず引きこまれた。
国芳のユーモアあふれる戯画《金魚づくし》シリーズが4枚出ていて楽しめた。後期にも別なものが出てくるようだ。
後 期
前期と同じく、春信の中に驚くほど良い色彩が保たれているものがある。《娘を背に負う奴》、《五常 信》などは、その際たるものである。春信の《洗濯》の洗濯物や《百人一首 柿本人麿》の衣にはキメダシが目立つ。
写楽の有名な《二代目坂東三津五郎の石井源蔵》、《二代目嵐龍蔵の金貸石部金吉》、《三代目佐野川市松の白人おなよ》も質の高いものだった。
歌麿では、黒雲母の《美人器量競 五明楼 瀧川》、《絵兄弟 邯鄲》が楽しめた。勝川春潮の大判5枚続の《藤棚下扁額奉納行列》の大行列、勝川春英の《千賀浦 千歳川》も面白かった。
広重の《雪中椿に雀》のスズメの胸の白い毛が空摺で美しく表現されており、正面のスズメの顔も面白い。
国芳の《金魚づくし 百ものがたり》や《猫の当字(たこ)》などは抱腹もの。。
(2008.9a) ブログ@へ ブログAへ
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