前期にひき続き見に行ってきた。ちょうどギャラリー・トークに遭遇し、企画者の意図も十分に分かった。お気に入りを羅列する
○円山応挙《海上竜巻図》・・・右下の陸には突風に傾く樹が描かれ、海面が大きく波立っている。竜巻の中心には、一匹の龍が上っていく。江戸時代の人たちにとっては、竜巻も自然の実景として鑑賞されたのである
。○小泉斐《黒羽城周辺景観図》・・・前期には右隻が出ていたが、後期は左隻。いずれも黒羽藩の藩主の命により、城山から現在の大田原市のあたりを眺めた雄大な展望。
○中村竹洞《神州奇観》・・・国学者によって描かれた富士山。
○小泉斐《富岳写真》・・・実際の富士登山の実証記録。後期には、絶頂全図・絶頂略全図・九合目略全図が出ていた。
○狩野探幽《富士山図屏風》・・・右隻には三保の松原、左隻に富士山。余白を生かした優しい絵である。
○司馬江漢《駿州八部富士図》・・・雪舟の富士山の画をもとに描いたと記している。大きな広がりを持つ画である。
○司馬江漢《相州江之島児淵図》・・・水の表現に淡い青を使った上品な画。実際の山より誇張して描いている。
○曾我蕭白《比叡山図》・・・もくもくとした山肌は異様である。大きめの点描もこの画を独特なものにしている。
○曾我蕭白《月夜山水図屏風》・・・複雑な立体表現の見事な屏風。画の中に入って散歩しているような気持ちで時間をかけて観た。
○池大雅《近江八景図》・・・一筆書きの琵琶湖。八景のお定まりがサラリと盛り込まれている。
○住吉弘定《四季之段図》・・・「徒然草」を基にした画。
○長谷川雪旦《鎌倉江の島図屏風》・・・のびのびとした状景で、飛行機の上から見たような空間。海の淡青も上品である。
○横井金谷《雪景山水図》・・・軽妙なタッチで、文人のコテージ集落を描いたユーモラスな画。
○鈴木芙蓉《鼈背蓬莱図》・・山の上には鶴が舞っている。島全体が大亀=「鼈」の背中に乗っているというどんでん返しがある。
○長澤蘆雪《蓬莱山図》・・・蘆雪の傑作。蓬莱山は遠くに描かれているが、空に鶴の編隊が山を目指しており、鶴の上には仙人が乗っている。海からも亀の編隊が山を目指している。
見逃せない作品が多く、章立ても良く考えた展示だった。
(2009.4a)
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